ディーラーの整備はなぜ高い?|元ディーラー工場長のお話

ディーラーに整備をお願いすると整備代高いですよね。

高くなってしまうには理由があるのですが、元ディーラー工場長である代表がその理由を解説していきます。

【設備や建物にお金がかかっている】

まず皆さんが一番最初に想像するのはここではないでしょうか?

工場の建物にはメーカーから指定されたCIという基準があります。

各作業場のスペースとか設備などに何十項目もの決まりがあり、建てた後も定期的にチェックが入ります。私がいたディーラーなどは壁のタイルまで指定でした。(当然イギリスからの輸入になります。)

整備の際に使用するコンピューター診断機も数十万円しますし、ジャガーランドローバー基準ではメカニック二人に一台以上必要です。年間使用料も一台につき数十万円かかります。(JAGTECでは診断機も完備しています)

代車なども軽自動車というわけにはいかないので、その維持費も整備代に含まれてきます。

【メカニックの育成にお金がかかる】

メカニックの給料は安くて有名ですが、ディーラーのメカニックはその中でも少しマシな給料です。

ディーラー整備士は経験が財産ですので辞めてしまわないよう待遇が少しだけ考慮されています。

輸入車整備は国産車整備よりもきついのでそうでもしないと誰もやらなくなってしまうのですが。

もう一つは定期的に研修を受ける必要があるからです。

新人研修に始まり、新型車研修、故障探求研修や接客マナー研修など様々なテーマの研修があります。

各々の研修はジャガーランドローバーの場合、愛知県豊橋市にある研修センターで2泊か3泊して行われます。

(多い時には2か月に一度くらいの頻度で研修受けてました。)

当然その間は当然仕事はできませんし、研修の交通費と研修代(一日おおよそ3万円位)は会社もちです。

ディーラー整備士の人件費はとても高くつくのです。

【ディーラーだから】

なんのこっちゃ?ってなりますが、ディーラーだから整備見積もりが高くなるんです。

メカニックは毎日同じメーカーの車を整備しているので当然その車の癖や傷みやすいところ弱いところを熟知しています。

何百台も整備する中でほかの車にトラブルが有った所は当然チェックします。

「この車はここが傷みやすいな」

「だいたい××年過ぎるとここが壊れる可能性が高くなるな」

「こういう使われ方をしているとここが壊れるな」

などの観点で車の点検をしますが、それらをすべて考慮した見積もりはどうしても金額が高くなりがちです。

お客様からすると「今まで問題なく普通に動いていたのに」「前回近所で車検をやったときは○○万円でできたのに」などと不満を持たれやすいところだと思います。

お客様にそれら作業の必要性をきちんと説明できれば良いと思うのですが、ディーラの場合サービスフロントがきちんとわかりやすく説明していない場合が多く見受けられます。

そもそもその車種の作業経験がないフロントなども多く、実際に車を見ていなかったりするのでちゃんと説明できていない場合が多いです。

メカニックは

「可能性は低いけど一応見積もりに入れよう」

「まだ交換時期まで早いけど一応見積もりに入れとこう」

と見積もりを作る場合がありますが、フロントに伝わらず、

お客様に

「交換しないとだめです」

「次の点検までは持ちません」

等と薦めてしまうことが多々ありました。

【部品単体修理をしない】

これもディーラーあるあるだと思うんですが、基本的にアッセンブリー交換しかしません。

高価なコントロールユニット内部の半田割れや内部ショートなどは技術力のあるメカニックであればさほど難しくはないのですが、メーカーから認められた修理方法ではないためディーラーでは基本的にやりません。

作業効率重視の現場でも部品を外して新品部品を取り付けるアッセンブリー交換のほうがはるかに楽なのでメカニックにも好まれます。

コントロールユニットなどは物にもよりますが20万から50万位の物が多いので修理であればかなり費用を抑えることができるはずです。(もちろん修理不可能な場合も多いです。)

コントロールユニットに限らず例えば12気筒のインジェクターホース全数交換もインジェクターAssy交換ではなくゴムのところだけ国産汎用ガソリンホースに変えることで70万円以上かかるところを12万円ほどに抑えたりすることも可能です。品質も純正部品より良いです。

修理可能な部品は本当はたくさんあるんです。

もう一つは修理した部品の耐久性の問題です。

新品部品であればある程度品質が保証されています。(古い車の新品部品はやはり製造から大分経っている場合も多いですが)

修理部品は修理した部分以外は元の古い部品だという事、修理方法によっては新品と遜色ない場合や新品ほどの耐久性が期待できない場合があるのは事実です。

新品部品との価格差や、そもそもその車をあと何年使うかによって、修理がいいのか部品があるうちに新品部品のほうがいいのかは慎重に考える必要があると考えます。

【純正部品が高い】

ジャガーランドローバーの基本的な消耗部品は純正でもそれほど高くありませんが、(それでもちょっと割高)それ以外の部品はべらぼうな値段設定の場合があります。

今は安くなりましたが、ジャガーのデンソー製ナビデータディスクなどは当初¥70000ほどしていました。

日本で作る→イギリスに輸送→イギリス倉庫保管→日本に輸送→日本の倉庫保管→ディーラー→お客様

こんな輸送経路で長旅をして、特にイギリス→日本のところで飛行機に乗ったりするので部品の流通コストが馬鹿にならないですよね。日本国内も部品は宅急便で各ディーラーに運ばれるので、自前の配送網がある国産ディーラーよりはるかにコストがかかります。

部品の生産数が少ない。

ジャガーランドローバーは高級車でそもそもの部品の生産数が少ないのでどうしても割高になるんだと思います。

性能や乗り心地重視のため一つ一つの部品が高級品を使っていてなおかつ共用部品が少ないのも一つの原因です。

ヨーロッパでは製造から8年間は性能を維持する部品の供給と価格に関する法律があるそうです。そのためかその8年を過ぎたあたりで急に価格が跳ね上がる部品があります。

新車製造の時に何万個と外部の部品メーカーに発注していた部品を、例えば10年後に数十個単位で発注する場合単価が上がってしまうしまうのはやむをえないのかもしれませんね。


こうして様々な理由でディーラーの整備は高くなってしまうのがお判りいただけたでしょうか?

民間工場やガソリンスタンドの整備は確かに割安ですが、予防整備やきちんとした整備は行わずに車検に受かるかどうかや消耗品の点検などの最小限度の整備しかできません。(複雑な個所はディーラーに持ち込んでいるはず。)

JAGTECではディーラー以上の技術力でお客様にご納得いただけるよう最適な整備を提案させていただいております。

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