はじめに
みなさんはエンジンオイルどのくらいで交換していますか?
5000㎞ごとに交換、1年ごとに交換、車検の時に交換など様々なタイミングがありますよね。
多少交換をサボっても、すぐには走行不能にはならないので、ついつい忘れがちです。
エンジンオイルにも種類があって、どんなのが良いのか迷いますね。
ジャガーランドローバーの大きいエンジンのモデルだと、ディーラーでオイル交換するとおおよそ5万円ほどかかります。
気軽に交換できるお金持ち以外は適切な時期に適切なオイルで交換して車を長持ちさせましょう。
交換しないとどうなるのか?
では、交換しないとどうなるのでしょうか?
エンジンオイルの役割や性能については、ほかのたくさんのサイトがあるのでここでは割愛させてください。
長年ディーラーメカニックとして、延べ何万台のジャガーランドローバーを整備してきた視点から、具体的にどんな車種のどんなところに不具合が出るのかお話していきます。
①オイル漏れを起こしやすくなる。
エンジンオイル交換をサボっている車は、高確率でエンジンオイル漏れをおこしているのをよく見かけます。
エンジンオイルの添加剤の一つにゴムのシールを柔らかくする成分が入っています。古くなって走行距離が多くなったオイルはこの成分の働きが弱くなり、ゴムのシールを固くしてしまいます。
「エンジンは毎日動かしたほうが調子いい」なんていうのはこのあたりにも理由があります。
オイル漏れはエンジンの内部にも起こりますので、燃焼室にカーボンが堆積してノッキング発生→エンジン本体にダメージやマフラーの触媒損傷につながったりします。1998年以降のV8のXJ辺りはこの辺が要注意です。
オイル漏れ修理は、場所によって多額の費用が掛かりますので、特に古い車には状態の良いオイルが必要になってきます。
②ターボ車は特に要注意
最近のジャガーランドローバーに搭載されている2.0Lターボエンジンについてはタービンシャフトのベアリング損傷が時々あります。
タービンは走行中1分間に10万回転以上の高速で回転しています。その軸は一般的なベアリングでは対応できないので、フローティングベアリングという特殊な構造で、オイルに浮いた状態になっていて、ターボの超高回転に耐えることができます。その浮いているわずかな高さで、ターボが回転する時の細かな振動を吸収することもできます。
しかし、古いオイルは希釈されたり、分子構造が切断されて柔らかくなり、この油膜を作ることができません。
結果、10万回転以上の高速回転しているシャフトとベアリングが直に接触する。さらにはタービンとハウジングも接触してターボは全損になります。
③タイミングチェーンが摩耗する(伸びる)
これも時々あるのですが、エンジンがものすごく調子悪い。カタカタ音が大きく通行人が振り返るほど。なんて症状で入庫した車を点検するとタイミングチェーンがずれていた。なんてことがあります。
タイミングチェーンとはクランクシャフトとカムシャフトをつないでいるチェーンでこれがズレるともうエンジンはまともに動けません。
動けばいいほうで、ずれが大きいとピストンとバルブが衝突し、もうそのエンジンはほぼ全損です。
タイミングチェーンがズレる原因は様々ですが、エンジンが新しい内ならば、チェーンのたるみを取るテンショナーという部品の不具合が多いです。あとはチェーンが暴れないように抑えているチェーンガイドの破損などでしょうか。
しかし、古い車の場合はオイル管理が不適切な場合が多いです。
たいていはチェーンが摩耗してのびる→テンショナーの調整範囲を超える→チェーンがたるむ→チェーンがギアを飛び越えてズレる→エンジンがものすごく調子悪い(掛からない)。という事が起こっています。
エンジンオイルの規格の中にもAPI/SPのグレードができたときに「タイミングチェーンの摩耗防止」という文言が入っていた位でしたから、ジャガーランドローバーに限らず最近の車に採用されているタイミングチェーンは摩耗しやすいんだと思います。恐らく省燃費性能と運転中の騒音対策のために昔のタイミングチェーンより設計に余裕がないんでしょうね。
余談ですが、私が昔乗っていた日産車も新車から3年3万キロ弱でタイミングチェーンが伸びてしまい、交換した記憶があります。
エンジンオイルを入れるフィラーキャップからタイミングチェーンが覗ける車もあり、オイル交換の時などにチェーンのたるみ具合を見れる範囲では確認しています。エンジンをかけるときの音でもある程度判別可能です。
チェーンが伸びている車やテンショナーが不具合をおこしている車は始動時に独特なガラガラ音が出る場合があり、判別が可能です。
タイミングチェーンが伸びてしまった場合、車種によりますが、ディーラーだと高い車種では80万円以上の高額修理になります。新品エンジン交換だと300万円近くなります。
どんなオイルを入れればいい?
では、どんなオイルをどのくらいの頻度で交換するのが良いのでしょうか?
一番はメーカー指定の純正オイルです。これを5000㎞~10000㎞もしくは1年の早いほうで交換が理想です。
2000年代以降のジャガーランドローバーならば、API/SL規格以上の全合成オイルで10000㎞または1年の早いほうで交換しておけば、ほぼトラブルはないと思います。12気筒車は部分合成のほうがオイル漏れなどのトラブルが少なめになります。
ディーゼルオイルならばCF-4を10000㎞~15000㎞もしくは2年以内で交換。
API/SL、CL-4規格でもあまりに安いオイルはやめたほうが無難です。
性能の高いオイルを作るとなるとそれなりにコストがかかります。
残念ながらエンジンオイル市場には偽物が多く出回ってるのも事実です。
我々プロでも偽物を見極めることは困難です。
出所をしっかり確かめて、あまりに安いオイルに手を出すのはやめたほうが良いでしょう。
あくまで個人的な感想ですが、ディーラーやカーショップは問題ないでしょう。
町工場や規模の小さいガソリンスタンドに依頼するときにはよく確認してください。
フラッシングしたほうがいい?
走行距離が伸びてくるとエンジン内部に汚れが蓄積されていきます。
また、エンジンオイル交換をサボるとエンジン内部に急激にスラッジが堆積している場合もあります。
これらはフラッシングなどで落としたほうが良いのでしょうか?
これはメカニックの中でも意見が分かれると思いますが、私は付いてしまった汚れはそのままにしたほうが良いと考えます。
理由をいくつか書いていきます。
①残ったフラッシング材がどんな悪さをするか分からい。
フラッシングした後にエンジンオイル交換してもエンジンの構造上すべては抜けきれない為、どうしてもフラッシング材が内部に残ることになります。この残ったフラッシング材がエンジン内部でどんな悪さをするのか分からないのです。
「前乗っていた車では調子よくなった。」
「他の人のブログではエンジン不調が解消されたと書いてある。」
「友人がやったときはエンジンが調子よくなった。」
なんてことがあるかもしれませんが、上にも書きましたが、エンジンそれぞれに使っている部品や弱点などが違います。
エンジン内部にどんな悪さをするか分からないものを入れるのは、あまりにもリスキーだと考えます。
②かえって不具合を招く。
フラッシングで汚れがきれいになるのはあまり見たことがないのですが、もしキレイになるのであれば、その汚れはどこに行くのでしょうか?
フラッシング中に古いオイルに溶け込むのであればよいのですが、そんな短時間では汚れは落ちませんよね。
となれば、新油交換後にもじわじわ汚れがエンジンオイルに溶けたり、固形物が剥がれたりしてゆくと思うのですが、エンジン全体の汚れが落ちるとなると、かなりの量になります。
それが、新油の性能を落とし、オイルフィルターを詰まらせ、オイルフィルターのバイパスバルブが開き、ゴミ交じりのオイルが各部に廻ることなんてことになりかねません。
ゴミが混じったオイルはカムシャフトの油路やピストンリングの隙間、油圧で動いているカムチェーンテンショナー、油圧可変カムなど様々な部分に詰まっていくでしょう。
それならば、シリンダー壁やカムカバー裏なんかにくっついている汚れは、エンジンの寿命までそのままそこに留まっていてもらったほうが不具合がおきません。
③どうしてもであればオイル交換を繰り返す。
中古車で購入直後で前オーナーがどんなオイルをいつ交換したのかわからないから念のためフラッシングしたい。とか、もういつから使っているかわからない汚いオイルが入っているなんて場合は、通常使うオイルで2回、3回、替えるのが良いです。オイルドレンからオイルを抜いてもエンジンの中のオイルは全部抜けきれません。
XJの5.0Lエンジンのマニュアルを見るとエンジンオイル全容量8.9Lに対してオイルフィルターまで交換時で7.25Lとなっていますので約1.65Lは古いオイルが残る計算になります。経験上新油を入れてしばらく回してもう一度オイルを替えるとほぼ、エンジンオイルの色が新油と同じになります。
まとめ
いかかでしょうか?
エンジンオイル交換だけでもいろいろ気を付けなければならないことがありますね。
経験のある専門のメカニックであれば、オイル交換するだけでも同時にいろいろな点検をしているのも、お判りいただけたでしょうか?
どうか、愛車と末永く良い状態でお付き合いするためにオイル交換をはじめとしたメンテナンスに気を配っていただけると幸いです。